ハーフビルドとは?

ハーフビルドとは?

家づくり、建物づくりは昔から誰にでもできる簡単な技術でした。
そのシンプルな技術に、複雑で高度なものが時代を経るに従い加わってきたのです。

日本の伝統的な大工さんの鉋仕上げの技術は、木材をまったく別のものに変身させてしまうと言ってもいいほどスペシャルなものです。その美しい仕上げは誰にでもできるというものでは到底なく、特別な一握りの大工さんの手の中にしかありません。私もそうした美しいもの、大工さんの手仕事の他には代えがたい技術は大好きですし、リスペクトしています。
でも、だからといって、家づくりそのすべてをプロの手に委ねなくてはいけないわけではないと思うのです。
家づくりを住まい手のもとに取り戻すことで得られる暮らしの豊かさがあると考えていますし、
家づくりを住まい手のもとに取り戻すことは可能だと考えています。
ハーフビルドとは、自分には出来ないスペシャルな技術については敬意を持ってプロに委ね、自分の手でまかなえる仕事を自分たちの手でやってゆこうという考えです。

私は設計者で、図面を引きコストを調整し工事監理をします。 そのなかで、設計者は芸術家であり、おのれの世界観を実現するために存在していると考えている人たちがいます。 時々耳にするのは、設計者に設計を依頼したらその設計者の価値観を押し付けられて辟易とした、というものです。双方にボタンの掛け違いがあったのだとは思いますが、同じ設計者として心が痛む話です。

当然ですが、建築は自分だけのためのものでない限り勝手気ままに事をすすめるわけにはいきません。かならず設計の依頼者がいてその依頼に答えるかたちで設計を進めてゆきます。ただ、難しいのは、依頼者のいうがままにしていて良いわけではなくプロとしての適切なアドバイスや提案が求められるところです。
私達設計者は常にプロとしてのアドバイスと提案が求められます。かっこいい形、美しい形というのも求められるでしょう。使いやすさも求められる。一つ一つの素材の選び方も求められる。それらを突き詰めてゆくと、私が思うには、それは依頼者に寄り添ってプロジェクトの実現を考えることなのです。
寄り添うとは、一人ひとりの人間には人生があり、過去があってそしてやってくる未来があります。その時間軸の中で依頼者の豊かな生活をどのように建築という世界で実現するのが良いのかを一緒に考えることです。
建築というのは資産です。資産をどう作るかという話でもあります。資産をどう次の世代に残すかという話でもあります。残念ながら今の日本では建築という資産は減価償却してしまいますから、それも含めて考えてゆかないといけません。
また、建築では資産価値の他に利用価値と言うものが大切です。これは資産価値とは別物で、減価償却して資産価値がなくなったとしてもリノベーションすることで利用価値は半永久的に残すことが出来ます。いやいや、より良い利用価値を持ったものに蘇らせることだって出来るのです。 ここで重要なのは時間軸を俯瞰しながら考えてゆくことです。
自分たちの手で工事をすれば工事費が安く出来るのではないかと考えます。これも大切なことです。自分の人生の時間を何にどう使うか?家づくりに使ってみるというのも、人生を豊かにする選択肢としてとても魅力的ではないでしょうか。

また、今必要なことと将来必要になりそうなことは別のことです。それを同じレベルで考えてしまうと自分の人生を縛ってしまうことにもなりかねません。必要な時に必要なものをつくる、最初はプロのお願いしてあとから必要になったものを徐々につくるというのもハーフビルドの大切な考え方です。

こうしたこと全てを通して、プロに依頼した方がいいのか、自分たちでやったほうが良いのか、自分たちでもやれるのか、今やるのか10年後にやるのかいつやるのか、そうした条件や情報を整理して計画を組み立ててゆくのが、ハーフビルドのサポートなのです。
ハーフビルドは家づくりの選択肢を一気に広げてくれます。あなたにとっての豊かな人生を、今までのステレオタイプな家造りから一歩広げて考えてみてはいかがでしょうか。

2017年8月 初出