「国産材はなぜ売れなかったのか」
著者:萩大陸 出版:日本林業調査会
Facebookでこの本を紹介されていた方がおられました。
ストレートなタイトルに迷わず購入。
国産材の生産と販売で、どうして国産材が商品として魅力のない物、つまりは売れないものになってしまったのか、抱負なデータやヒアリングをもとに書かれた本です。
基本的には時系列に沿って書かれており、最初のところで「空気売り」 という言葉が出てきてびっくりします。
つまりは、丸太を製材するときに、丸い部分をできるだけ残して製材して、それでも四角い物と同じ値段で売っていた事を言うのですが、戦後の復興期に木材がいくらあっても足りない頃、木材は売り手市場だったわけで、買い手は文句が言えなかった。そういう時代背景が生んだ悪しき習慣です。そのあしき習慣の上にあぐらをかいていたことが冒頭で指摘されます。
しかし、高度経済成長で高まるばかりの住宅需要、木材需要に対して、林業サイドでは供給が追いつかなかったのも事実です。そのために、海外の木材の輸入が自由化されることになります。これについては拙著「木の家に住みたくなったら」でも書かせていただきました。
最初は北米材が入ってきましたが、製材の精度など芳しくなかったために、北米材はまだ国産材を駆逐するほどまでには至りませんでしたが、欧州の品質の高い木材が入るようになって、品質的に完全に国産材は負けてしまい、今に至っています。国産材の品質をどのように担保してゆくのかが今なお大きな課題となっています。
また、国産材の魅力がなくなったのは、価値観の変化にあることも指摘されています。つまり、日本人がかつて持っていた、木へのこだわりは和室に無地の柱を使うというようなことに現れていました。天井の板も木目のきれいなものが珍重されていました。そのような、並材ではない「役物」とよばれる高額で取引される材料に、活路を見出した林産地、製材業者も少なくなかったのです。他の部屋はともかく、お座敷とよばれた和室には贅を尽くした材料を使いたいという気持ちが、多くの日本人には、かつてはあったのです。ところが、最近は日本の住宅からそうした和室がどんどん消えてきている。住まいへの価値観や、和室に使う材料への価値観が、急激に変わってきていて、「役物」が売れなくなってきたのです。
このような問題点を踏まえて、今後の国産材をどのようにして売れるようにしてゆくかが最後に書かれています。この提案の部分は、いろいろな意見があると思いますので、詳しくは触れませんが、森は日本という国土の、あるいは日本人の生活を支えている大切な環境です。数えきれないくらいの生物の生活の場です。その環境をしっかりと維持できなければ、日本という国が滅んでしまうと言っても過言ではない。そのためには、森林資源を有効に活用してゆく必要があるのです。
これはみんなで考える問題です。そのためにも、この本は、大切な事がたくさん書かれた本だと思います。