昨夜になりますが、あたり前の家ネットワークが主催の
ハーフビルド講座の第一回目が行われました。
講師は私と菅沼悟朗さん。
菅沼さんはご自宅をセルフビルドで建てられた設計者です。
参加者は
現在自宅をセルフビルド中のご夫婦や
これからセルフビルドで自邸建設を考えられている方。
既に出来上がった自邸に手を加えて楽しまれている方。
工務店の方。
そして、メディア関係の方々。
多種多様。
そこが面白いわけですが、セルフビルドへのみなさんの思いをお聞きできたのが一番の収穫だったのではないかと思います。
私のスタンスは
家づくりを住まい手のもとに取り戻すこと。
そのためのひとつの手段として
セルフビルドや直営式があると考えています。
信用できないからセルフビルド
昨日の講座ではそういう発言がありました。
つまり、作り手側が信用できないというのです。
世の中のたいていのことは
失敗したくないからプロに頼むということになります。
失敗したくないというのは
成功を期待するということです。
では、期待される成功とは??
これだけ価値観が多様になってふくれあがった現代社会で
期待される成功も多様かつ高度になっています。
だから、
期待される成功がかなえられる確信がユーザー側で持てなくなっているのかもしれません。期待に応えてもらえるリアリティが失われているのかもしれません。
それが作り手側を信用できないということなのだと思います。
家づくりに対する一般ユーザーの期待は高まるばかりです。
それは、空間の豊かさや設計の質かもしれないし、飛び抜けたローコストかもしれないし、技術的な裏付けかもしれない。あるいは、セルフビルドのサポートかもしれない。
プロは期待にちゃんと答えてあげないと生きてゆけない。
一方、ユーザーは自分がプロに期待することを整理して考える必要があるでしょう。自分で整理できていることが家づくりを失敗しない最善の方法となります。
昨日は建築家が糾弾される日でもあったのです。
建築家は自分の作品づくりに一生懸命で、うんぬん。
確かにそういう建築家もいるし、そういう建築家に頼む人は、その建築家の世界を期待しているわけでから問題はないと思います。
ただ、建築家も十人十色。
十人いたら十通りの設計方法があるし
ユーザーの期待も十通りあります。
自分が期待している物をかなえてくれる建築家かどうか
ユーザーはどうやって見分けるのか?
課題は大きいと思いました。
プロに何を期待するか。
その期待に応えるための最善の方法はどういうものか。
セルフビルドというキーワードを通して考えることはとても大きな問題につながっています。
先日はお疲れ様でした。
古川さんの話を聞いていて、今まで私が持っていた古川さんの印象が少し変わりました。
セルフビルドを考えている人にとってこの方はとても強い味方になる、そう思わせる力を感じました。
セルフビルドで最初にぶつかる高い高いハードルは「自分の家を設計する」ことだと思います。
そしてこれは、セルフビルドすることの意味にかかわってくる最重要項目ではありませんか。
古川さんの助言に期待がかかる部分です。
セルフビルドのサポートを考えること、自分のためにも続けていきたいと思っております。
どうぞよろしくお願いします。
菅沼 さんもお疲れ様でした。
その昔、独立する直前ですが、私は設計をやりながらつくる人と考える人という境界に疑問を持つようになりました。
ひとつは汗を流して埃まみれになっている職人さんの力強さに対して設計者のあまりの無力さに辟易としていたのだと思います。ただし、そこから私は大工になろうとは思いませんでした。体力に自信がなかったというのが一番の理由でしたが、それでも現場に一歩でも近づきたいと工務店に入り大工さんや職人さんの中で2年間ですが生きてみました。その経験はやはり大きい。現場が生き物のように動いていることをリアルに感じることが出来ました。多くの設計者に見えていないのはそこなんだと思います。私にはそのダイナミックな現場でものがつくられてゆく瞬間こそが建築現場の醍醐味、家づくりの醍醐味です。だから、その醍醐味のなかから建築を、住宅を考えてみたいと思っています。
ただ、建築現場がダイナミックに動くためにはプロとしてのルールが必要です。一般の方たちに見えにくいのがこの現場でのルールです。だから、住まい手のものであるはずの家づくりを住まい手の手に取り戻すためには、このルールを伝えていかないといけないと思った。それさえ出来れば、家づくりは住まい手のものとなる。だから、私はセルフビルド至上主義ではありませんが、家づくり至上主義で、そのためにはセルフビルド、住まい手参加は欠かせないものなのです。
そして、私が考えている設計というものは、従来の設計とやや趣が異なる新しいタイプの設計なんだと思います。施主参加をサポートすることが私の設計では大きな位置を占めているからです。施主と現場をつなぐこと。これが出来なくては良い住まいは作れないと考えています。
というわけで、現場経験のある設計者という希有な立場の菅沼さんには教えていただきたいことが山のようにあります。こちらこそ、今後ともよろしくお願いいたします。