国立西洋美術館で行われている
「マティス展」に行ってきた。
目的は切り絵シリーズのジャズの原画を見ること。
国立西洋美術館は知る人ぞ知るフランスの建築家 ル・コルビュジェ設計の建物。
学生の頃からよく行ったものだが、今回行ってみてびっくりしたのは
いつのまに地下展示室が出来ていて、今回のマチス展は地下展示室で開かれていた。
それはともかく、マティスである。
ジャズの原画は最後のコーナーにあったが、その前にいろいろ興味深い展示があった。
もっとも興味深かったのは
マティスが絵画の制作過程を順次写真に撮影していたこと。
そして、マーグ画廊のオープニングの展覧会(1945年12月)として開かれたマティスの個展に
完成した絵画を展示するとともに、制作過程の写真も並べて展示したということ。
その展示はマティスの指示によるものであったこと。
そして、今回の展示でもそれに習って制作過程の写真が完成した絵画の横に並べて展示されたこと。
完成された作品という概念を越えた「プロセス」そのものに価値を見いだすという価値観の転換。
その転換を生んだ時代を考えると興味は尽きない。
そして、ジャズ。
1943年から1946年頃にかけて制作された切り絵によるシリーズ。
1869年生まれのマティスは74歳--77歳という高齢に達していて
絵筆を持つことが困難になったために切り絵の手法で制作をつづけた。
その切り絵を元にリトグラフがつくられ、その名も「JAZZ」という本にまとめられた。
僕もこの本は普及版で持っている。
こんなのだ。
たしか、ウイントン・マルサリスのレコードジャケットにも使われたりして
そういう面でも有名だが、この切り絵シリーズの原画が日本にやってきたのだ。
僕は、しかし、そうとうに驚いている。
ジャズの原画を目の前にして。
リトグラフになって印刷された本からはけっして見ることの出来なかった
マティスの手の跡が、そこにくっきりと残されていたからだ。
一様に見える色面も弟子がガッシュ(不透明水彩)絵の具を塗ったとはいえ
そこには微妙なムラがあってそのムラさえ画面のなかでしっかりとした役割を与えられている。
なおかつ、一色に思っていた色面も、何枚もの紙がつぎはぎされ、重ねられてつくられていて
切り絵の切り口も、はさみで切った鋭利な切り口と、あきらかに手でちぎったような切り口もあって
その些細なニュアンスの違いが、画面のなかを隙間なく緊張感で満たしてる。
こんな切り絵を作り出したマティスのパワーとはなんなのか。
絵筆で絵画を描くことが困難になった・・・・???
切り絵は安易な道か・・・・・。
そんなことは全くない。
そんな恐るべきパワー。
70過ぎのおじいちゃんが持っていたパワーに
僕はまったく圧倒されっぱなしで帰ってきたというわけだ。
それにしてもすごいですね。
作家が作家たらんとするそのエネルギー。
それはたぶん、そうしないではいられなかった、
というようなものだったに違いなのだろうけれども
自分もモノをつくる者として
もっともっとパワーを持たなくては、と、ほんと、そう思いました。
<追記 2004.12.13>
世紀末芸術の装飾性という視点からマティスを見てみる
「美術史とその言説」--宮川淳 に収録されている
「マティスと世紀末芸術」を読んでみる。
マティスは小生も好きな画家の一人です。 晩年のきり絵のオリジナルが見られるとはなかなか興味深いですね。マティスは「ジャズ」完成のあとすぐにヴァンスのドミニコ会修道院礼拝堂の装飾を開始して1951年に完成させるのですが、これもすごい力仕事と思います。 礼拝堂の内部装飾については、今回の展覧会では紹介されてましたでしょうか?
いのうえさま
残念ながらドミニコ会修道院の礼拝堂の仕事については
まったく紹介されていませんでした。
でも、ジャズと一緒に展示されていた
切り絵シリーズの「ポリネシア 空」「ポリネシア 海」には
本当に圧倒されてしまいました。
必見だと思います。
マティス展で「プロセス」を楽しむ
マティス展行ってきました。激混みかと思いきやそれほど混んでる感じでもなく、ゆっくり見られました。久しぶりにJazzの全作も見れたし、休憩入れつつ3時間ほど堪能。今回プロセスとバリエーションというコンセプトでの展示だったのだが、これが面白い。マティスは作品が….
マティス展開催中
〜12月12日。 国立西洋美術館 http://event.yomiuri.co.jp/matisse/ マン・レイ展に引き続き、ライターの常葉隆義さんが観覧の感想を書いてくれたので転載します。…
マティスの思い出
ドイツ赴任最後の夏、南仏へ旅行に行った。コクトーの教会やルノアールの自宅「コレット荘」、ニースのシャガール美術館、デュフィ美術館に行ったし、アルルの跳ね橋も見に行った。だけど一番印象に残ってるのがヴァンスという村にある、晩年のマティスが全てを手がけたと…
「ポリネシア 空」「ポリネシア 海」は見たこと無いんでとても楽しみです。 教えていただき有り難うございました。 ではでは
TBありがとうございます。
原画ますますみたくなりました。
また観覧記楽しみにしてます。
7ntrdblさん こんにちは
僕もいつかは南フランスの空のもと
マティスの世界にふれてみたいものです。
これぞ、マチスなマチス展
マチス展。この秋の東京で、終わってしまった<RINPA展>と人気を
二分してる様子。
展示内容は、ほんと、マチス好きを裏切らない構成だったと思います。
しかも、12月12日まで、会期はたっぷり☆何回でも訪れたいイイ展覧会☆
まずは、いかにもマチスな装飾性と…
おそくなりましたが、TBありがとうございました。あちこちの美術館で単品マティスを見ていたときより、もっとマティスが好きになりました。
赤,赤,赤!〜マティス展を鑑賞して
○ 色彩のダンス
マティスの作品は,赤,青,白,黄,黒,緑と様々な色彩(いろ)がダンスをしている。その中でも,最も魅惑的なのは独特の「赤」色である。一言で「赤」といっても,様々な色合いがある。現在,国立西洋美術館で開かれている「マティス展」には,ポン…
「マティス」展
上野国立西洋美術館で開催中の「マティス」展に行って来ました。(25日)
こんにちは、初めまして。
拝読させていただきました。
ジャズの原画の威力には私もただただ唖然とするだけでした。
観に行ってよかったです。
TBさせていただきました。
はじめまして
マティスで検索してたらここにきました。
JAZZのところで、小学校中学年くらいの男の子が想像をふくらませて、お父さんと楽しそうに話しているのが見ていてほほえましかったです。
マティスの理念どおり、疲れを癒してくれますね。
ポリネシアは感動でした。
また観にいこうと思っています。
Takさん TBありがとうございました。
僕はホントに美術展なるものは久しぶりでした。
でも、行って良かった、とそう思える展示でしたね。
うさぎ さん こんにちは。
僕も元気をもらって帰ってきました。
人に元気をあげることの出来るマティスは
やはり素晴らしい。
Henri Matisse : Process/Variation
国立西洋美術館にて、「マティス展」を観てきた。
マティスの作品は同一主題のヴァリエーションが特徴的である。
そこに流れるのは、幾つもの「変奏」。
パリの『ノートル=ダム』の表情は、七変化どころではない。
『ジョルジュ・ベッソン』は、明治時代の日本…
はじめまして。
TBありがとうございました!
私もTBさせて頂きます。
またお邪魔しますね、
宜しくどうぞ。
いくら印刷技術が進んでもその能力には限度があります。展覧会に行く度に出てきた所で写真集を買おうとしても今見たばかりの本物との差が大きくすぎて買う気をなくしてしまいます。
もう何十年も昔かもしれませんが、私も昔からマティスが好きで
竹橋の近代美術館でかなり大きな展覧会を見に行きました。しかし、実物の大きなダンスを見ても写真集と同じ印象しか感じませんでした。こんな画家を他にあまり知りません。これは悪口ではありません。間にどんな媒体をはさんでも同じ感動を与えることの出来る類希な才能と私は感じました。まるで逆の話でおもしろいですね。
マティスは時代の人であったということだと思います。
画家にとって写真という技術は
自分が製作するタブローを根底から揺さぶるものであったろうし
印刷技術も同様です。
そういう意味でマティスほど時代が生んだ新しいメディアを意識していたアーティストもいなかったのかもしれません。
kawaさんのコメントを読ませてもらって、そんなことを感じました。
今、Googleで、「マティス展」で検索したら、何とaf_blogが上から5番目でした!国立西洋美術館の次!!!Googleの謎を知ってしまったとはいえ、やっぱりこれはすごいことでは、、、
古川さんのエントリーや皆さんのコメントを読んで、私も駆けつけなくてはと焦っております。
some oriさん
いま、some oriさんがマティス展の会場を
ジョアン・ジルベルトのギターの旋律を口ずさみながら
そぞろ歩いている姿が見えます。
マティスの「ルーマニアのブラウス」が秋田にあった!!
一番好きなマティスの作品はどれですか?と聞かれたら、Tomotubby は迷わず、パリ4区のポンピドゥーセンター・国立近代美術館に常設展示されている「ルーマニアのブラウス」と答えます。どんな絵かというと、下のような絵です。
パリの「ルーマニアのブラウス」
マテ…
マティスは人々を幸せな気持ちにさせる才能に恵まれた画家ですね。
今日の深夜(翌日の1:45〜2:35)のNHK総合「色彩の画家マティスの世界・南仏光の礼拝堂」と明日のNHK教育・日曜美術館がマチスの特集です。日曜美術館はユーミンがゲスト、、、。
古川さん iga さん af biog:マティス にめぐりあえた!よかったよかった ! じつわ10月24日早朝のマティスの番組(1:45-2:35放映)はあったのですか?新潟中越大地震で中止されてませんか?ぜひとも拝見したかったのと放映されたのかをしりたいのです! 人の望みの喜びを。。。。。。
ogataさん
はじめまして。
iGaさんが紹介してくれた番組は二つとも中止でした。
再放送を期待していますが、どうでしょうか。
二つのマティス美術館の二つのタヒチ (Tahiti)
フランスの北と南にある、カトー=カンブレジとニースの両マティス美術館に、同時期にタヒチを描いた絵があることはご紹介しましたが、ちょうど二つとも絵葉書があったので、画像をUPします。
(左) タヒチの窓(1935-36)
(右) タヒチ〓(1936)
1918年に始まり1920年代…
マティス展 国立西洋美術館
先日、マティス展に行ってきた。「マティスとは?」どんな絵画を描いていたか知らなかったけどパンフレットを見たら「あ〜、この人か」と言うぐらいの知識で見てきた。入り口の解説を読むと「プロセス(過程)」「バリエーション(変奏)」という2つ視点から楽しむように…
古川さま! すぐにご返事有難うございます。マティス展の最終日までには、 NHKさまは 再放送をいつ企画されるのかどうかを何処で知らせてくださるのでしょうかネェ?!….. ところで はすチャン 空くんの公園(小金井公園)ファミリーハイキング!…..
での御写真. 3本足のフラミンゴ. 絵の中の絵にも 住まいとお花、でっつかい太陽が…イーゼルにのっかっている… 不思議な絵。 マティスに影響なされたんでしょうか! いろいろ感性豊かなものがつたわってきますネ!陽だまりの天使ですネ! 残された情憬ー地中海ーマティスの南仏ニースの礼拝堂。 光と風 海 太陽 空 雲 花咲く住まい 色彩 空間 … 人 ー宇宙ー
つれずれに……番組でのいろんな音楽を想像しつつ…落書き….. 再放送のマティスの番組がTV画面に甦ることをただただ祈るばかり … from1953(生)のおじさんです。
ogataさんこそ 僕のごった煮ブログを掘り起こしてみてくださいまして感謝であります。
マティスの番組の再放送は僕も願っています。
ところで、4歳の子供にマティスがわかるわけもありませんです、はい。
とにかく絵が好きなので、毎日帰宅するたびに新作が出来ています。
どれも紹介したい絵なので
娘の絵はカテゴリーをひとつ作ろうかと思っています。
録画予約してあったビデオを見たら日曜美術館は11月14日に放送予定のようです。それに世界美術館紀行の次回放送はニースの礼拝堂らしいですが、放送日は不明です。
iGaさん 嬉しい情報ありがとうございます。
さっそくビデオ予約を・・・・・
あっ!Gコードがない!
世界美術館紀行の放送日は12日(金)です。
http://tv.nikkansports.com/tv.php?site=007&station=0041&mode=14&sdate=20041112&shour=22&lhour=1&category=tn&sminutes=00&template=detail
iGaさん
いつもながらの貴重な情報ありがとうございます。
「世界美術館紀行」といえば
先日、グッゲンハイム美術館をやっていましたね。
それはそれでエントリーをひとつ書きたくなる内容でした。
古川さん & iGa san ! マティスの放映時間の御報告をありがとうございます !
その後 私なりに、もよりのNHKさんに、問いあわせてみたところ 10/24 am1:40-2:29放映 (中止)だった 番組は9/23 13:05-13:54放映されたフィルムと同じとのことでした。( たぶん ご存知かと、思いましたが, 私は、知りませんでした )ドラマ仕立て とのことです、、、。 12/12まで マティス展が開催されているので 再放送の可能性は あるのではないかッ!とのことでした!
henri matisse
マティスを観てきた。硬直してしまうほどすごかった。エネルギーがビンビン放出されて
マティス展
今日も秋晴れ、行楽日和でしたねー。
上野公園にある国立西洋美術館にて開催中の、「マティス展」に行ってきました。とっても良かった!
何がよかったか… 1.展覧会のテーマ「プロセスとヴァリエーション」。
2.ポンピドゥセンターから多くの作品がきてた。
3…
はじめまして。Googleで検索してトラバさせていただきました。しかしなぜか二重TBになっているようで申し訳ございません…。
「ジャズ」、本当に素晴らしかったですね。ホンモノの持つ力の凄さを、改めて感じました。
只今NHK教育で放送中「世界美術館紀行」を見てます。「切り紙絵」もしっかり紹介されてます〜。
kiri_co24さん
こんにちは
マティス好きがブログを通じて
オンラインでつながっている感じが
僕は好きです。
TBありがとうございました。
マティス展@国立西洋美術館
美術館の話題が続きます。くみこさん(母)が上京。前から約束していましたので、一緒…
日曜美術館を見てしまいました。
ユーミンとマティス。
その組み合わせが悪いとは言いません。
ひとつの世界があると思いますが
それはマティスの世界ではないよなあ。
一方、世界美術館紀行は
いのうえさんもコメントしてくださっている
礼拝堂が大きくとりあげられていたのが嬉しかったですね。
1981年のマティス展では「夢」のポスターを買いました。普段は絵のことなど何も言わない母が「私、この絵好きだよ。」と言っていた。23年ぶりに本物の「夢」に会いに行こうかな。
なんと、iGaさん まだ行ってなかったのですね。
行かれたらMADCONECTIONにエントリーしてください。
日曜美術館の続きですが
カメラが切り絵に思いっきり寄って撮影してくれた映像は
マティスの試行錯誤の痕跡を画像ながらちゃんと映してくれていました。
意識してだかどうかわからないけれども
NHKの良い仕事にパチパチと手をたたいておりました。
このマチス展ピカソに見せたいと思いながら興奮しました。佐倉のピカソ展これから見ますが、マチスに見せたいと思いながら見るでしょう。
桧山さん
はじめまして。
見せ合いっこ。面白そうですね。
両者はほぼ同時代のひとですが、どれくらいお互いを意識していたのでしょうか?
最近、小林秀雄の「近代絵画」を見直してみたら、ピカソはあってマティスはありませんでした。
宮川淳の評論にはマティスはあってピカソはなかったような気がします。
変な対比をしてしまいましたが
興味深いですね。
マティス展、出張で千葉に行ったので寄って帰りました(自宅は奈良なので)。私は単に絵が好きと言うだけで、仕事の後なのでマティス展とブリジストン美術館と梯子しようと思っていましたのに、この展覧会に魅入ってしまいました。ガイダンスも私たちにも難しくなく、簡潔で(私が美術に暗いと言うこともありますがわかりにくいむつかしい解説もあると思います)よく分かりました。金曜日でしたが、6時くらいまでは比較的すいていました。本当にもったいないので(正倉院展なんかいつ行っても満杯です)是非みなさん、マティスに感動して下さい。
norikoさん、こんにちは。
はしっこだけれども一応東京に住んでいる僕らは
やはり恵まれているのでしょうね。
でも、その「恩恵」ってやつは、
東京に住んでいるとなかなか意識できないのかもしれません。
norikoさんのように、遠方の方は「美術展のはしご」を計画している。思い出せば、僕だって美大を受験するために上京したときは美術展をはしごしてまわりました。
いま、マティス展をじっくり時間を気にせず見ることが出来たことを感謝しないといけませんね。
昨日ここでマティス展を褒めているコメントをたくさん見て、やっぱり行きたくなり、(卒論をやらなくてはならないけど)見に行ってきました。すごく混んでいたけど、行ってよかったです。最終日の三時半頃だったので20分待ちでした。
色がとても綺麗でした。鉛筆画の線が丸くてやわらかいデッサンも綺麗だなあと思いました。「ルーマニアのブラウス」
が好きになりました。
akikoさん こんにちは
今日は最終日でしたね。
僕ももう一度行きたかったのですが行けませんでした。(残念!)
20年に一度の大きな展覧会だと思います。
きっと後悔はしないと思いますよ。
卒論がんばってくださいね。