すでに先々週になってしまいましたが、12月2日に目黒美術館で行われている「秋岡芳夫展」に行ってきました。
秋岡芳夫は日本の工業デザイナーの祖というべき人で、その業績は多岐にわたっており、その全貌を知るまたとない展覧会となっています。
会場入口に並べられた竹とんぼに、まずは驚かされます。
晩年は竹とんぼの開発(!?)に没頭しておられたそうですが、シンプルなフォルムの中に空気力学など複雑な問題が絡みあっている、竹とんぼは秋岡芳夫さんのお仕事を象徴しているような気がしました。
展示されていたプロダクツとしてはラジオキットの箱がとても素敵だったのですが、目を引いたのは、この本。
「家庭の工作}という本ですが、椅子や棚など自分でつくってみようという本。
自分で作ってみる、やってみることで、人は物の大切さを知る、そのために本にまとめたというような解説がありました。
私の「住宅工事現場写真帖」に深く通じるものがあると、なんだかとても嬉しくなりました。
ともかく、内容充実な展覧会です。入場料金も900円と安い。
12月25日までですので、多くの方に見ていただきたいなと思いました。
そして、会場で買い求めた秋岡さんの著書「割りばしから車まで」です。
ちょっと長くなりますが、まえがきから引用します。
自分の生活に必要なものは、自分で工夫して自分の手でつくる。これが人間の物づくりの原型だと、私は信じています。
自分で作った物を自分で使ってみながら、不具合なところを見つけ、こうしたらいい、ああすればいいと、あれこれ考えて見て、考えがどうやらまとまったら、早速もう一つ作ってみて、工具も気に入らなければ改良して使い、ああうまく出来たぞと喜び、うれしがって使っていると、他人がそれを見て、同じものが私も欲しいと言えばさらに改良したものを作ってやり、と、私が人間の物づくりの原型と考えている物づくりは、ちゃんと人の心や頭や手のうごきがうまく丸い円を描いているのです。
現代の物づくりは、このうまく描かれていたはずの円から逸脱しているのではないか、というのが秋岡さんの主張です。大いに共感するところです。
「割りばしから車まで」は昭和46年に発行されましたが、しばらく絶版となっていて今年復刊しました。内容は決して古臭くはなく、逆に、エネルギー問題を深く考える今こそ、多くの人に読んで欲しい本になっています。
amazonでは何故か高値になっています。展覧会会場では正規の値段である1680円(それでも新書としては高いですが)売っています。