昨日上棟しました「森林をいかす家づくりの会」でサポートさせていただいておりますhinata_Houseでは
大多喜町から木材を買い付けるだけではなくて
大多喜町の大工さんに墨付けと刻みまでお願いしました。
これは、プレカットが主流となっている今の時代に
大多喜の木材を、さらに広く流通させるためのひとつの試みです。
現在、木造在来工法の家はプレカットが主流になっています。
その原因の第一は、
プレカットの方が大工さんの手で加工する(手刻み)よりも安価に出来るからです。
おおよその話ではありますが、30坪くらいの家ですと、プレカットでは30万円くらいですむものが
手刻みでは60万円ほどかかります。30万円の差は大きいですね。
第二に、若い修行中の大工さんが少なくなったということです。
これは、どういうことかと言いますと
簡単な手刻みの作業は、修行中の大工さんにとっては道具の使い方を覚えるのに最適です。
そういう人がたくさんいれば、手刻みという作業もつくる側にとって大きな役割を果たすのですね。
大工さんの見習いが減った分、プレカットが繁栄しているとも言えます。
こうして、プレカットが主流になってきますと
町から材木屋さんが駆逐されることになります。
というのも、プレカット業者のほとんどが
郊外の広い土地に巨大なプラントを建て、
全国各地にブローカーを派遣して、一円でも安い材木を大量に買い集めてきて
それを加工して売る、という商売だからです。
プレカットでは、材木は町場の材木屋さんを通して流通しません。
材木屋さんは商売にならない、というわけで
材木屋さんの多くは、アルミサッシュやシステムキッチン、ユニットバスを売ることを商売の主流にかえてはじめています。そういう時代の動きに対応できずに店をたたんでしまう材木屋さんも少なくありません。
生き残った材木屋さんでも材木を置いておく場所は不要になり
店先に材木が立てかけてあるような材木屋さんは町から姿を消すことになるのです。
一方、工務店さんも、墨付けと刻みをするためには、それなりの広さの作業スペースが必要です。
そうした作業スペースを自前で持っている工務店さんというのは、実は大変に少ないのです。
これほど、プレカットが普及する前には、自前のスペースがない工務店さんや個人営業の大工さんは、材木を買うという条件で近くの材木屋さんが持っている作業場を借りて墨付けと刻みをやっていました。
しかし、プレカットであればそういった場所を確保する必要がなくなります。
特に東京など大都市圏では、場所代が高いので、
そうした場所が必要でないというのは、工務店にとっては経費の節約になります。
それ故、プレカットでなければ木造の仕事を引き受けられないという工務店も多くなってきています。
私は、決してプレカットに批判的なわけではありません。
プレカットのコストパフォーマンスや
事前に、図面で細かな打ち合わせが出来ることなど利点も沢山あります。
修行中の若い大工さんのために手刻みの仕事を用意してあげる必要性ということももちろんありますが
たびたび仕事をお願いしている板橋の工務店さんでは
ほとんどプレカットでやっているのに、若い大工さんはちゃんと育っています。
ですから、手刻みをしないと若い人が育たないということでもないのです。
そう考えますと、やはり、
プレカットで木造住宅をつくってゆく現在の構造は否定できませんし、
そのなかで材木を流通させることを考えてゆくことが必要だと思うのです。
「森林をいかす家づくりの会」では
いままで大多喜の森から材料を出してもらうことしかやってきませんでした。
しかし、それでは、プレカット中心の現状に対応できないわけですね。
そういうわけで、千葉県の杉材をもっと流通させるためのひとつの試みとして
今回は、大多喜の大工さんの手によるプレカット(これもプレカット!)での材料提供をやってみることにしました。
この試みのもう一つの良い点は
大多喜の林業家のところにお金を還元するだけではなくて
地域の大工さんの手元にも還元が出来るということです。
林業家だけに還元される仕組みでは
決して地元の理解を得ることが出来ないし、
地元の理解がない仕組みは長続きはしないというのが
我々「森林をいかす家づくりの会」の考えだからです。
こんばんは、ご無沙汰のkameplanです。
プレカット、時代の趨勢と言えばそれまでですが、
主流になるのは仕方ないかと私も考えています。
町場の材木屋さんが無くなる寂しさもありますが、
どっこい材木屋さん。
私の知る町場の材木屋さんは、羽柄材や間柱、胴縁の納材の他、
「地元ならではの情報」も納めているところが多いですよ。
古い商社機能と言えば軽くなりますが、
材木屋さんは本来、地元と産地の情報をつなぐ役目だったと思います。
それが、今や地元間の情報も隔絶されているので、
材木屋さんがそれを積極的に担おうとしている、
そんな3代目の話を先日、聞きました。
また産地プレカットは、産地に若い衆のシゴトを作るために必要なことだと思っています。
林産地と言えば、有名な産地以外は過疎が進む危機にあります。
そこにプレカット工場を造ることで、若者の雇用機会が増える。
単純な機械操作だけでなく、木を見ながら加工し、
端材の有効利用策も若い衆が考える。
新たなビジネスモデルを作るきっかけになるかと思いますよ。
そこに積極的に設計が入って、いいもの、面白いものを発掘する。
以前お世話になった高知など、若い衆の活躍が芽を見張る程でした。
建て方は刻みをした人がいればスムースに行くもの。
ということで、刻んだ大工さんと材料が一緒に来てもらって、
現場の大工と一緒に建て方を進めてもらう。
この交流で、刻み技術の伝達も進んでいることを高知で知りました。
こんなやり方も、いいとおもいますよ。
kameplanさま
どうもどうも、こんにちは。
材木について考えると、一番大切なのは
産地と消費者をどうやって繋ぐことが出来るのか、ということにつきます。
林業家も、材木屋さんも、工務店さんも、産地と消費者を繋ぐ重要な基点になっています。
それでは設計事務所はどうかといいますと、私はものの売り買いに関与しませんから
そういう意味での基点にはなりませんが、基点と基点を繋ぐコーディネート役として重要な役を引き受けていると考えています。
そのようにネットワークを組んで近くの山の木で家を建てる運動を勧めている仲間も、kameplanさんもご存じのようにたくさんおりますよね。
それぞれ、いろいろなアイデアでもって、山と人を繋ごうとしているわけですね。
そして、日本各地、それぞれの環境と特色・条件があって、そのなかで良い方法を探っているわけです。
私と南房総の林業家、斉藤さんとの活動で言えば、南房総というのは、それほど無理をせずに関東圏全域に材木を供給できるポジションにあるわけです。特に東京都心部への供給は大切だと考えています。その時に、プレカットの問題、手刻みでなければ材料が出せないと言うことは大きな足かせになってしまう。
たぶん、こういう状況は千葉と東京という関係性のなかで発生してくるわけです。kameplanさんが活動している静岡県には静岡県の状況があるかと思いますし、それは我々の状況とはまったく違うものだと思います。
おたがいにがんばりましょう。