hinata_Houseの1階の柱の含水率の変化を調べてみました。
水分計で柱の目通りの高さ(床から1.5m)の位置で
かつ、柱の北面で測定しました。
柱は杉の一等材です。
測定日は
・2月8日--上棟→黒字 晴れ 前日に雨
・2月22日 →青字 晴れ
・3月14日 →緑字 晴れ
・4月12日 →赤字 晴れ 前日に強い雨
の4日間です。
冒頭の画像をクリックしていただけると拡大されます。
記載されている数字が含水率です。日付ごとに色分けしてあります。
まず、上棟時において、12.1%〜47.4%と、大きなばらつきがあることに驚かされます。
柱材は、すべて同じ条件で乾燥機にかけています。
もちろん、乾燥機の乾燥庫内でどの位置に置かれたかによって熱のかかり方に違いが生じますから
それぞれの材料が同じ含水率に仕上がるということは難しいのですが
それでも、この差が乾燥機内部での条件によって生じたものとは考えにくい。
杉材などの木材には個体差があります。
成育環境の違いや、遺伝的な性質をどのように受け継いだかということなんですが
杉は植物、生物ですから個体差があるのは当たり前ですね。
その個体差の中でも、年輪の目が粗かったり詰まっていたりという違いがあります。その違いの出方が大きいのは杉のような針葉樹なのですね。もちろん、目が粗い方が乾燥しやすく目が詰まっている方が乾燥しにくくなります。
とすれば、この含水率のばらつきは、杉材の個体差によるものだと考えるのが自然ではないでしょうか。
ちなみに、目の荒さだけではなく、材質の違いによっても乾燥しやすいものとそうでないものがあるようです。
ここでは、杉材には個体差がかなりあるということが含水率という数字から読み取れるのです。
さらに、時系列の変化を見ていますと
上棟時から、次第に含水率が減ってゆくということではなく、時として増えている(戻っている)ことがわかります。おおよそ、前の費に雨が降ったりした時に含水率は増えているようです。つまりは、含水率は周囲の環境によって増えたり減ったりと変化するものだということです。
驚くべきことは、我々は、このように個体差が著しく周辺環境による変化も大きい材料を相手にしているということです。
そのなかで、すべての杉材の含水率を15%以下に管理するということがいかに困難なものかということが実感出来るわけですが、何百年という時間の中で、杉材は日本人の生活に親しまれ使われてきた歴史を考えてみますと、現代の我々がそのような技術、杉の木を使うという技術を、いかに失ってきてしまったかということに改めて気付くわけです。
飯能の材木屋さんにお邪魔した時に、杉材は、外に出したり倉庫にしまったり、ひっくり返したりと、手間ひまかけて乾燥させてあげなくてはならないと言っていたことが思い出されます。
それほど、手間ひまかけても杉材を使ってきたということは、杉材の成長が早かったということもあるのでしょうが、その材質の柔らかさが日本人の感性にあっていたのではないかと思います。
現代社会では、手間ひまをかけることはコストをいたずらにアップしてしまうこととして戒められてしまうわけですが、それゆえに、手間ひまかかる杉材が我々の手元から失われてしまうとしたら、それは大変に悲しむべきことだと思うわけです。
手間のかかる杉という材料を、うまく生かしてあげたいものです。