世田谷にある「S_House」は2000年に完成しました。
路地状敷地に建ち、道路から見ると間口が2mに満たない外観が印象的で、いくつかの雑誌でも取り上げていただき、ちょっとですがテレビでも紹介されましたので、メディアへの私の実質的なデビュー作といえる仕事です。
その「S_House」のリフォームの相談に昨日お邪魔させていただきました。
竣工当時は、ご夫婦ふたりきりで暮らすシンプルで無駄のない建物として
室内の間仕切りは浴室以外無い、つまりはトイレにも間仕切りがないという
ロフトを含めて三層のワンルームの形で完成しました。
その後、小さなご家族が増え、まずは吹き抜けにも無かった手すりが今年の初めにつけられましたが、さらに最近、諸外国からのホームステイの受け入れを始められたそうで、そうなってくると、今まで通りの生活を受け入れてくれていたはずのこの小さな箱も、いろいろ不都合が出てきたとのこと。
やはり、家族以外の人の生活は自分たちの生活とちゃんと分けることが出来るようにしたいとのこと。お子さんの成長も考えると、プライバシーが確保できる子供スペースも考えておく必要があるのではないかということ。そして、今までは不要だったトイレや脱衣場の仕切り(ドア)も、やはりこうなってくると必要であるとの決断にいたったというわけです。
決断、などど書くのは、設計の時からトイレのドアだけは必要ではないかと、私の方から何度も提案していたのですが、ご夫婦の気持ちは変わらず、ついに建物は竣工に。その後、すぐに建具の取り付けの相談があるかと思えば、ずーっと今まで無かったのですね。ドアのないトイレというのはこちらのご夫婦にとっては最良の選択だったというわけです。その最良の選択を変えるというのはやはりそれ相当の決意がなくては出来ないのだと思います。
もちろん、トイレにドアが「いる」「いらない」、そういう設計のやりとりのなかで、それほど大きな手間をかけずに建具が付けられるようにしておきましょうというところで当時の話は決着。よって、今回のような時も問題はありません。
それにしても、荷物の少なさに感心するばかりです。
また、部屋を飾るアイテムもご夫婦の趣味が生き生きと、しかし、出しゃばらずにポイントを押さえて選ばれていて、そうした住まい手のセンスにも感心してしまいます。
例えば、寝室はこんな感じです。
最初の写真は2階の居間ですが、反対のアングルから吹き抜けを入れてみるとこんな感じです。
年明けにリフォームのプレゼンテーションを行う予定です。
基本的には建具を数本加える形でまとめてみようと考えています。
7年前とは思えないように、綺麗で、シンプルな美しい暮らしをされてるのですね。
物を増やさない秘訣を教わりたいものです。
私も出来ればドアがないほうが好きなので、トイレのドアもいらないくらいなのですが
人が来た時、やっぱり困るだろうな、と思います。
月日がたつにつれて家も変化していくのはきっと普通のことなんでしょうね。
最初、広いスペースが欲しいと思っていたのに、今では、狭いほうがいいな~なんて
思っちゃいます。
広さの感覚って実際に住んでみてからやっとわかるんですね。
Furukawaさま
本来なら、hanawa_h@usの方でコメントするのが筋なんでしょうけど。トイレのドアの件で此方へ書かせて頂きました。改めてS_Houseさんを拝見させて頂き、家に対する取り組み方は正にセルフビルドの精神が充満していると感じます。そのやり方や量的なモノの違いは各個人で多いに異なるものなのでしょうネ。
また、竣工時の写真に比べて、現在のインテリアがとても素敵です。やはり建築物の主役は人間なのだと改めて感じます。それにしてもスッキリですネ、これが我が家でしたらカメラアングルが変わるたびに非難物品の大移動があるでしょう。
ここまで徹底していませんが、私の計画でも最初はトイレの引き戸は付けない予定です。通風や使い勝手を優先させると要らないのではと考えています。
しかし、囲いは有ります。トイレの間口に対してL字型に壁を配置する予定です。L字の突き当たりに閉塞感を感じますのでその面を鏡張りとしたいのですが、トイレ内部の写り込みが何処まで有るのか模型で再現する予定です。
年末で大車輪かと思われるhanawa_h@usさんでの、情報を落ち着きましたら公開をお願いいたします。N様にも宜しくお伝え下さい。
reirei さま
このお宅はロフトスペースも含めて27坪くらいのコンパクトな家です。太陽熱を利用するパッソブソーラーで底から暖めているというのもポイントのひとつです。つまり、間仕切らずとも家全体が暖かくなるように考えていますから、冷暖房効果のために開け閉めする建具も必要ないというわけです。さらに、三層になっていますからレベルの違いで視線も避けらますから生活の仕方を整理すれば間仕切りはいらないわけです。こうしたことは設計の段階から話を詰めていました。これだけ、スマートに暮らされているには、それ相当の努力をされているのだと思いますが、住まい手が私の提案をよく理解してくださっていたということでもありますね。設計者としては嬉しい限りです。
go-shiyoさま
トイレにドアが必要かどうか、こちらの建て主さんであるSさんとはずいぶんと議論しました。私としてもその経験は新鮮でした。そのプロセスの中で、三層ワンルームで視線をよけながら三つの生活スペースがつながりながら一体になっているというイメージを共有できたのだと思います。設計者が必要とされるポイントのひとつは、住まい手の生活を具体的な形で「発見」するためのガイド役ではないかと考えるようになったのもこの経験からだと思います。