【木材活用はバケツリレー その3】 家づくりの会と木の研究会
私は個人設計事務所です。大げさなようですが個人事務所というのはすべての責任を自分で背負う覚悟で仕事をやっています。建築士法改正で設計監理の仕事の責任は大変重くなり、それを引き受けるのは大変ですが逆に言えばやりがいのある仕事です。
そして、個人だからこそ外の情報も大切で独りよがりにならないためにアンテナを立てる必要があり、そのためには仲間とのつながりが大切になります。
私は1998年に個人事務所として独立しましたが、2007年に「NPO法人家づくりの会」の仲間になりました。「家づくりの会」とは、住宅の設計を主な活動としている設計事務所の集まりで、任意団体としてスタートして35年の歴史を持つ団体です。尊敬する先輩建築家もたくさん所属しています。
設計事務所は十人十色、それぞれの仕事のやり方などがあって勉強になります。その中で有志が集まった「木の研究会」ができて私もその仲間に加わりました。
家づくりの会に入る前から、千葉県の林業家と一緒に千葉県産の木の家を使った家づくりをしていました。木材の乾燥などさまざまな試みもその時にしていましたが、さらに広い知見で進めるために木の研究会は大きなチャンスでした。
木の研究会は良質な木の家をどうやったら提供できるのかを一緒に考え研究していこうという集まりです。当初は家づくりの会の設計者だけでやっていましたが、それでは議論もなかなか深まりませんでした。そこで、木の家に関わる林業家や製材所、そして工務店にも声をかけることになりました。
品質の高い木の家を作るには山側から製材所までつながる信頼できるネットワークが欠かせないというのが我々の考えだったからです。
そして、木の研究会には、秩父で金子製材を営む金子さんや、今はウッドALC協会の事務局に出向している協和木材の松浦さん、天竜材を扱うアマノの山口さんなどがメンバーとして加わることになりました。
特に金子製材さんや協和木材さんは長くJAS製材に取り組まれており、木材の品質について実に多くの試行錯誤をされていてその経験値は我々設計者のはるか遠くに及び、木の研究会で多くのことを学びました。
たとえば、杉の乾燥についてです。
私も以前からハンディタイプの水分計で上棟直後からの含水率の変化を測定していましたが、乾燥のしやすさなど大きな個体差があることにびっくりしていました。その違いは比重に関係し、8段階の比重選別で乾燥のタイムスケジュールを変えている仲間もいます。彼らは、より良い木材を提供したいという熱い思いから試行錯誤を重ねてきたのです。
私は木の研究会で素晴らしい仲間と出会うことが出来たのです。
初出「森林組合」No.576(2018年6月号)ホームページ掲載にあたり一部加筆修正した。