【木材活用はバケツリレー その6】 わらしべの里共同保育所 その3 設計のポイント
わらしべの里共同保育所の設計にあたり気をつけたことがあります。金子製材所さんから素材調達は十分可能と言われても、なるべく入手しやすい材のサイズで設計をしました。
基本的に12尺のグリットで構造の計画を立てることで梁材の長さは4mで足ります。
3歳児、4歳児、5歳児はワンルームの大空間でと希望されましたが、それぞれの年齢で3つに区切る目印のように柱を真ん中に2本立てることで長材を多用しない無理のない大空間を作りました。
子どもたちは年齢や遊び方に応じて島をつくって過ごしますが、その時にこの2本の柱の周りに集まったりしているようです。
子育て支援センターは柱がない方がいいということで登り梁の構造として鉄の部材を開き止めとして使っています。
梁材としては6m材で150X240が8本、5.5m材で135X240が10本ありましたが、もちろん、このくらいの在寸と量でしたら問題はないのは確認済みです。
問題だったのは垂木で4寸角で4.5mのものが500本以上必要で、さらには、構造計算するとその垂木のすべてがヤングE90以上になりました。
全数機械グレーディングされている製材所さんでしたらE90以上の強度を持った材の出現率のデータをもっています。産地にもよりますがE90以上の材は全体の2割から3割位だというのが私の感覚です。たとえば、4m材で済むのであれば柱や桁材として流通しているものから選んで使えばいいのですが、長さが4.5m必要となると素材調達の壁はいきなり高くなります。
そこで、構造設計者に屋根荷重を丁寧に拾い直して再度計算してくださいとお願いしたところ、半数はE70で十分となったのです。素材調達は壁は一気に下がりました。
設計者は設計で何を気遣えば良いのでしょうか?プランなど使い勝手も重要です。そのうえで、どういう素材でその建物作り上げるのか、それにリアリティがどのくらいあるのか、リアリティがないとしたらどうしたら良いのか。現場や素材生産者とのコミュニケーションが大切です。コミュニケーションとはお互いのことを十分に知ろうと歩み寄り、どちらかが一方的にならないようにお互いのことを尊重することです。
製材品で作ることができたのも、金子製材所さんや協和木材さんとの信頼関係、協力関係があってこそです。
現実に、競争入札の時に何社からは無垢材ではなく集成材に設計変更をして欲しいという申し出がありました。彼らにとって無垢材の素材調達や工事が大変難しかったのでしょう。それは、今までは鉄筋コンクリートや鉄骨造ばかりやってきた施工業者にとっては、中規模木造というのは、資材調達については経験もなくどうしたら良いのかわからないからなのだと思います。
ここにバケツリレーが途切れてしまうかもしれない問題があるのです。
初出「森林組合」No.579(2018年9月号)ホームページ掲載にあたり一部加筆修正した。