NHKスペシャル「トラック・列島3万キロ」を観た。
http://www.nhk.or.jp/special/libraly/04/l0007/l0718.html
「追っかけ」と呼ばれる長距離ドライバーの姿をとらえていた。
流通と地産地消について考えた。
長崎にある田中運送という会社。
50台のトラックを保有するという規模だが
それは中小クラスの、
いわば日本の運輸を支えているような会社の代表的な規模とのこと。
「流通」
この言葉には、まったく考えさせられる。
それは、千葉県産の木材を使った家づくりの運動をしているのと関係している。
(「森林をいかす家づくりの会」)
たとえば、自分が住んでいる地域の山から切り出した木材よりも、
遠く静岡や九州からやってくる木材の方が安いという現実がある。
もっと、極端な話では何千キロも遠く海を越えてやってくる木材の方が安いという現実もある。
それは、流通の規模が巨大であり、そのマスのメリットが最大限に生かせるからだ。
それは、柱材(10.5cmX10.5cmX3m)というような汎用性のある規格の木材については顕著である。
大型のトラックに積まれて日本列島を木材があっちからこっちへと縦横断しているのだ。
一方、木材については食材と同様に地産地消という考え方が出始めている。
それは、木材が育つ森がその下流域にある地域の生活環境と深く結びついているからで、
木材の地産地消こそが自らの生活環境に責任をとれる行為であるとの考えるからだ。
さきの「森林をいかす家づくりの会」もその考えによっている。
しかし、マスの流通が縦横無尽に機能している日本では
大きく動かす「流通」にのった方がコスト面で勝ってしまうのだ。
そんなことを日頃考えている僕に
この番組はとても強烈だった。
その「流通」を支えている人々の生の姿がそこに映し出されていたからだ。
少しでも遅れたら賠償責任が発生する。
厳しい条件で仕事は依頼され
それでいやなら他にやってくれるところはたくさんあるんだ、と言われてしまう。
田中運送は、そこで安全運転で差別化を図ろうとした。
制限時速の自主管理だ。
しかし、スピードが出せないと、
もし道路の渋滞などで生じてしまった遅れを取り戻すことが難しくなる。
「追っかけ」といわれる仕事では、荷物の出荷時間と到着時間が厳しい。
与えられた時間がとても制限されている。
ちょっとでも失敗したら取り返しがつかない、そういう緊張感が仕事場に張りつめる。
ドライバーは時としては寝る時間を惜しんで運転を続ける必要もでてくるのだ。
ちゃんと眠れないどころか、家に帰れない、家族に会えない・・・・。
その姿の切実なこと。
こういう人たちが「流通」を支えているんだと思ったら考え込んでしまった。
だって、こんなこと長く続くはずがないじゃないか。
「流通」という世界に寄った矛盾、シワ。
やっぱりそれはまずいんだよ。
僕らは、宅急便を大変便利に利用しているんだけれども
その背後にある矛盾に気づくべきだと思う。
東京は食糧の自給率は1%だっていうし、
あまりにも「流通」にたよりすぎている僕らの生活そのものが
やっぱりおかしいのではないだろうか。
地産地消の木材の話を最初にした。
繰り返すが、地産地消の方がコスト的に負けてしまうのだ。
しかし、我々にも勝ち目がある。
それは、我々の仲間である林業家は
自分のところで製材も乾燥も出来る。
そんな林業家はなかなかいない。
これはとても重要なことだ。
たとえば、杉の梁材というのは一般に流通していない。
そういう物を、先ほどから繰り返して言っている「流通」を通して手に入れようとすると
とてつもなく高い物になってしまう。「流通」では個別の対応が出来ないからだ。
「流通」が建物のデザインをも決めてしまっているといっても過言ではない。
それにくらべて、林業家が製材と乾燥を一手にやってくれると
過剰な経費がかからないぶんだけ個別対応が出来るのだ。
実際に、杉の梁材や厚板(30mm以上)については
いわゆる「流通」の世界よりもずいぶんと安く入手することが出来る。
これは、我々にとっては大きなアドバンテージとなる。
マスの「流通」ではなく、個別対応。
そこに我々の生き残る道があると思っている。
<追記050824>
コメントをいただいた楽天クーペンギンさんのブログ(おじいちゃんになってもIT業界で生きていく。)を訪問した。
そこに書かれていた流通にかんする数々の記事は大変参考になりました。
ここでご紹介させていただきます。
○おじいちゃんになってもIT業界で生きていく。(楽天クーペンギンさん)
「トラック・列島3万キロ 時間を追う男たち」
昨晩、NHKスペシャル「トラック・列島3万キロ 時間を追う男たち」というのがありました。今の物流は確かに早くて便利です。現に頼んでいたものがすぐに届くというのは嬉しいです。が、こうした中、過酷で危険な労働を続ける長距離トラック運転手、そ中小運送業者が犠牲…
「トラック・列島3万キロ」 〜NHKスペシャルより〜
普段お店で私達が目にしている素材や加工された物は、物流無しで
は目にすることは出来ません。物流とは作り手から消費者まで繋ぐ
ルート。つまり全ての商品や材料(財)は原産地や工場、港の倉庫
などからレストラン、スーパー、デパートを通じて私たちの元へ。
物流…
長距離トラックの苦悩〜NHKスペシャル
命を削る男達〜NHKスペシャルを見ました。 長距離輸送も業者間の値引き競争で値崩れを起こし、無理な要求を飲まざるを得ない中小企業の苦悩。 制限速度リミッターを装着され、90キロ以上出せない中で、定刻に荷物をつかないと個人が多大な弁償をしなければならない。 渋…
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トラック列島三万キロ 時間を追う男たち
トラック列島三万キロ 時間を追う男たち と言うドキュメンタリーを先日NHKで放映
ども はじめまして。
どうして流通業界にしわ寄せが行くのか、端的に言ってデフレだからです。
流通業界がもっと人を雇って、十二分に余裕のある人数で回せ、
ちゃんといい給料がもらえてればこんなことにはならないんですが。
名無しさん
こちらこそはじめまして。
この番組は、見過ごされがちな流通によってしまった
経済のしわを、多くの人たちに教えてくれていたのだと思います。
考えさせられることの多い、経済の世界です。
2005年8月17日分のブログに、リンク貼らせて頂いています。
これからも、ときどき訪問させて頂きます。
楽天クーペンギンさん こんにちは
クーペンギンさんのブログを拝見してきました。
流通に関する興味深い記事が数多くエントリーされています。
とても参考になり、とても刺激的です。
こちらからも本文でリンクさせていただきました。
こちらこそよろしくお願いします。