この正月に東京に遊びにきていた両親を見送ったら急にこの映画が観たくなりました。
まったく、べたな展開ですが、この映画は観るたびにいろいろなことを発見します。
そこのところが、映画の奥の深さ、この映画の懐の深さなんでしょう。
今回は特に憎まれ役ともいえる杉村春子演じるところの長女「志げ」が
夜中に酩酊で足下もおぼつかなく友人と転がり込んでくる父親との絡みのシーンが印象に残りました。
友人宅にでも泊めてもらうよ、と出ていった父であるからして
夜中に自分のところに戻ってくるのも変な話しなのですが
それを志げは、しょうがないんだから、もうほんとうにしょうがないんだから、と繰り返し迎え入れます。
この映画はすり切れてノイズだらけの16mmフィルムを小さな映画館で見たのが最初なのですが、その時からビデオでもDVDでも何度もみていて、その都度、杉村春子に嫌悪感を感じていたのだけれども、今回はちょっと違っていたのです。
父と娘の関係が実に微妙なところで描かれているなあと感じ入ってしまいました。
切っても切れないものが親子の縁。この辺が実に切なく描かれていると思いました。
杉村春子は憎めない存在として、ちゃんと描かれていると思いました。
この映画、数年後にみたら、また違う発見をするに違いないのでしょう。
何だか、数年後にこの映画を観る自分が楽しみになってきました。
杉村春子は、わたしの好きな女優のひとりです。
四谷の稽古場(兼自宅)では、とても怖いおばさんだったようですが、
彼女が舞台や映画のシーンに出てくると、抜群の存在感とともに
“場”の空気がガラリと変わるのがわかりますね。
鎌倉へ出かけると、小津作品で杉村春子が登場する撮影ポイン
トを、わざわざカメラに収めたりします。(笑)
Chinchiko Papa さま
やはり、すごい女優さんですよね。
小津の映画の中でも、存在感が違うなあと思いました。
今回の発見も、やはり杉村春子でなければだめでしょうね。
良い俳優は映画に深みをもたらすのだと思います。
東京物語は、年齢とともに見方が変わってきますね。最初は、東京の姿に目が奪われていましたが、この頃は家族のあり方が気になっています。
じんた堂 さま
ちょっと前の「東京クリップ」で
じんた堂さんが書かれていたのを読んで近いうちにもう一度みてみたいなと思っていたのですが、何せ長い映画なのできっかけがないとなかなか観られないものですね。
今回は両親の上京があったのが良いきっかけになりました。
ほんと、懐の深い映画です。